認知症でリハビリを拒否されます
80歳の祖母には12年前から認知症の症状が出ています。今年に入って足の骨を折って、入院して手術を受けました。その後、夜になると大声で「帰る」と言い張って同室の人にも迷惑をかけています。リハビリをすれば歩けるはずですが、反発してまったく受けつけません。認知症の人にリハビリは無理なのでしょうか。
家で「自発的運動療法」をしよう
認知症のある人に、こちらの指示どおりに動いてもらおうなんて、とても無理なことです。「泣く子と地頭には勝てぬ」ということわざがありますが、私たちは「泣く子と痴呆には勝てぬ」と言ってきました。そもそも赤ん坊を説得して指示どおりに動いてもらおうなんて思う人はいません。
小さな子どもに訓練が必要なときは、おもちゃを使い体の動きを引き出したり、遊びの中で手足を動かしてもらいます。つまり、子どもの興味のあることをとおしてリハビリをしていくのです。 認知症のお年寄りの場合でも同じです。
若い人の訓練プログラムにお年寄りを合わせようと思わず、本人の興味のあることをとおして身体を動かしてもらうのです。歩きたいと思うような目的を見つけてあげることも大切です。平行棒を使って立ったり歩いたりすることだけが訓練ではないのです。 赤ちゃんが歩けるようになるまでには、床を四つんばいで進んだりしますね。
お尻を床につけたまま進む行為も歩くための訓練になるのです。でも、病院内の床を這ったりしていると、「徘徊」と呼ばれてしまいます。家の中で布団から抜け出して畳の上でゴソゴソしていても、ちっとも不自然ではないのですが、洋式の環境では問題行動に見えてしまうのです。 もし可能なら、家に連れ帰って、布団での生活に切り替えてください。放っておいても、布団から出てゴソゴソするはずです。これこそが訓練なのです。
四つんばいから立てひざに、そして壁際での伝い歩きへと、自然にレベルが高くなっていくはずです。周りは本人がそうやってゴソゴソするのを、危険がないように見守るだけでいいのです。「徘徊」は「自発的運動療法」なのです。