正しい食事の姿勢を教えてください。

介護技術の本を買って読みました。お年寄りの食事姿勢は、ギャッチベッドを30度くらいに起こした姿勢がいい、この姿勢がいちばん飲み込みやすい、と書いてありました。食道が下になるので食べたものが気管に入りにくいからということなのですが、ほんとうにその姿勢がいちばん合理的なのでしょうか?

ふだん通りの姿勢こそ老人向き

私たちがふだん通りにやっているのと同じように、いすに座って前かがみになって食事をしてもらいます。すると、ご飯を食べさせてもらっていた人が、自分で食べるようになることがよくあります。

ベッドの上に寝たまま、ギャッチベッドで背中を起こしたとしても、上を向いた姿勢で食事をさせられていては、こんなに食べにくい姿勢はありません。それが普通の食べやすい姿勢に戻っただけで、お年寄りは一人で食べるようになるのです。 介護の本に書いてあるお年寄りの食事姿勢、それは大変な間違いです。

このような腹圧のかかりにくい姿勢ばかりとらされていると肺活量も少なくなってきます。 球マヒとか仮性球マヒという病名がついていて、飲み込みの反射が完全になくなっている人の場合にはこうした姿勢を取ることがありますが、脳卒中やパーキンソン病、あるいは老化によって、飲み込みの反射がなくなることはないはずです。

むしろ、上向きの姿勢をとらされていることによって、飲み込みにくくなり、むせ込んだりするのです。私たちが日頃やっている前かがみの姿勢は、飲み込みの反射が自然に起こる生理的で自然な姿勢なのです。

しかも、本来なら少し食べ物が気管に入ってもゴホンと咳で押し出すことができるはずなのです。 つまり、その老人に残っている力を、食事という日常生活の中できちんと活かそうということです。座れるから座りなさいとか、訓練なんだからというのではおもしろくありませんし、お年寄りは乗ってくれません。

でも、一日に三度、毎日くり返される、食事という楽しみのために力を使おうというわけですから、これならお年寄りもその気になってくれます。ぜひいすに座って食事してもらえるように心がけてください。