布団よりベットの方がいいですか?

祖母はもうすぐ90歳です。ときどき腰やひざの痛みを訴え、2~3日寝込むことがあるものの、一人で何でもしています。最近、近所に住む人から「ベッドのほうが布団の上げ下ろしをしなくてすむから、本人も楽で介護するときも便利よ」と勧められました。本人は布団のほうがいいと言っていますが、どうしたらいいですか?

ベッドは生活領域を狭めます

自治体が主催する老人介護教室などに参加すると、必ずといっていいほどベッドの使用を勧めています。「介護している人が腰を痛めたりしないように」というのが大きな理由のようです。

でも、ちょっと待ってください。ベッドは床から立ち上がる必要がないので本人は楽なことが多いのですが、逆に身体の機能している部分を使わなくなり、動けなくさせてしまうことがあるのです。

四つんばいや、あぐらをかいた姿勢で身体の横に両手をつき、お尻を上げて移動することができる人は、ベッドを使わないほうがいいでしょう。畳の上に布団を敷いて生活していれば、家の中を自由に移動することができます。ベッドだと生活空間が限られてしまいますが、布団なら床全体に行動範囲を広げることができます。

年をとってから新しいことを始めるのは難しい、とよく言われています。これまでずっと畳の部屋で生活してきた人が、急にベッドで生活するときも同じです。昼間は大丈夫でも、夜は畳の上に布団を敷いて寝ているつもりで、ベッドから落ちてしまうこともあるのです。 できれば生活習慣を変えずに過ごしてもらいたいのですが、床から立ち上がることが難しくなったときはベッドを提案してみてください。

もちろん病院で使っているような、床からマットまでの高さが70センチもあるベッドでは困ります。それでは立ち上がろうにも怖くて床に足を降ろせません。 ベッドはお年寄りの身体機能に合わせて使うもので、介護者の負担を軽くするためだけの道具ではありません。お年寄りが元気に活動してくれれば、介護の労力も少なくてすむはずです。