「化粧療法」に効果はありますか?
デイサービスセンターの職員です。先日、テレビ番組で「化粧療法」が行われている光景を目にしました。デイサービスに通うお年寄りたちが、お化粧をしてもらって、うれしそうな表情をしていました。積極的に「動物療法」などを取り入れている介護施設もあるようですが、実際に「療法」に効果はあるのでしょうか?
「化粧療法」より化粧をしましょう
「化粧療法」とは、施設や病院の認知症のおばあさんに化粧してもらうことです。きれいになって笑顔が出たり、人にほめられて喜んだりして、イキイキしてくるそうです。実際に表情が明るくなったという報告を聞きます。
でも、私は「〇〇療法」といって一括りにしてしまう発想には疑問を感じているんです。 化粧は何のためにするのでしょう。人に会っておしゃべりしたり、街でショッピンクしたりするから、きれいにしてから出かけようと思うんです。施設から出るわけでもなく、誰か会いたい人がいるわけでもないのに、化粧だけをしてもむなしい感じがしませんか。
大事なのは化粧することではないんです。どこかに行きたいと思うところがあることなんです。どこかに会いたいと思う人がいることなんです。もちろん、認知症の人はそんなことを自ら訴えたりはしないでしょう。でも、身近にいる介護者は、老人が何を喜びにし、どこで誰と会っているときにいちばんイキイキしているのかを知っているはずです。
行きたい場所へ行くために、会いたい人に会うために、化粧をしたり身だしなみを敷えるのです。つまり、化粧をするのが当たり前だと思えるような生活づくりをしましょう。おばあさんたちの持ち物の中に、口紅や化粧水が少しずつ増えていくなんて楽しいじゃないですか。 「せっかくドライブに行くんだから、お化粧して行きましょうね」「久しぶりの外泊でお孫さんが待っているから」「今日は誕生日だから少しきれいにして行きませんか?」といった具合いです。
これはもう「化粧療法」ではなくて「化粧」そのもので すよね。