性的行為への対応に困っています。

特養ホームの職員です。軽い認知症のあるおじいちゃんが、夜な夜な寮母の仮眠室に入ってきて問題となり、本人は園長からきつく叱られました。その後は治まったように見えたのですが、実はおとなしいおばあちゃんのベッドに毎晩のように潜り込んでいたことが分かりました。どのように対応したらいいでしょうか?

「性」には「生」全体で対応しましょう

生活介護研究所の代表をしている坂本宗久さんが、「性的異常行為の行方」という文章があります。今は絶版になった『老人ケアの達人たち』(筒井晝房)という本に載っていました。

最初は、職員さんの胸を触るくらいだったAさんが、次第に廊下でおちんちんを握り締めて見せて歩くようになった、というのです。そこで職員さんたちは、いろいろな対処法を考えます。その中でも傑作なのは、ポルノビデオをAさんに見せる、というものです。これで欲求不満を解消しようというつもりだったようですが、「異常行為」は治まりませんでした。

結局、何がAさんを落ち着かせたかというと、家族の面会でした。面会の次の日から、「異常行為」はパタッとなくなったというのです。私も長いあいだ特養ホームに勤めていましたが、こうした性的行動の大半は「寂しさ」のようです。人は本当に寂しくて不安なとき、基本的欲求である「性」をとおして訴えるのかもしれません。ですから、「性的問題」に「性」だけで対応するのではなく、その人の生活や生き方といった「生」全体から考えてあげましょう。

まず、家族の面会が減っていないかどうか調べてください。距離はあっても、気持ちが近づいていれば寂しさは薄らぐでしょう。 もちろん叱ったりするのは逆効果です。

職員さんは性的欲求を取り払おうと考えるのではなく、性的関心を満たしてあげましょう。あいさつ代わりに握手をしたり、レクリエーションのときに肩に手を回してあげたり、といったスキンシップが効果的なのです。特に若い女性の職員さんがその役目に最適です。いえ、若くなくても大丈夫。向こうから見れば、みんな若いんですから。