母の気持ちが理解できません。

同居している75歳の母の気持ちが理解できなくて困っています。「もう死にたい」としんみり言っていたかと思うと、「お前たちに迷惑をかけたくないから老人ホームに入る」と言ったり、「最後までこの家に居たい」と言ったり、どれが本音なのか分かりません。どんな言葉をかけてあげたらいいのでしょうか?

防衛機制の先取りなんです

お年寄りはよく「私なんか死んだほうがいい」なんて言います。これは不安の現れだと思ってください。若いころに頑張って生きてきた人ほど、老いたり人の手を借りなければ生活できなくなってしまった自分が腹立たしいのです。

私たちなら、税金を払っているのだから、年をとったら国に面倒を見てもらえばいい、なんて考えますが、今のお年寄りはそうはいきません。「人様に迷惑をかけるな」と教えられて育ち、国のために死ぬのが当然という時代を生き抜いてきたのです。

実際に多くの人が「お国のため」に死んでいったのです。 生き残っただけで罪悪感があるのに、お国の世話になるなんてとんでもない、とお年寄りは思うのです。「死んだほうがいい」というのは、世間がそう思っているに違いない、と考えているからなのです。そして、周りから言われるくらいなら、自分から口に出したほうが惨めな思いをしないで済むと思うのです。

私はこの心理を「防衛機制の先取り」と呼んでいます。防衛機制というのは、何かに失敗したとき、自分を守る言い訳を考えることですが、老人は失敗したり恥をかいたりする前に、先回りして自分を防衛してしまうのです。 こんなとき、介護をする私たちは「世間さま」の代表です。「そんなこと言わないで、私が寂しくなるから!」なんて言ってあげてください。

そして「どうしてそんなふうに思うの?」と尋ねてあげてください。何かしてほしいと遠回しに訴えていることも多いんです。 何よりも、「ああ、この年になるまで生きていてよかった」と思えるような体験をしてもらえることが大事です。春になったらいっしょに温泉に行く計画でも立ててみてはいかがでしょう。