耳が遠い父と話す方法を教えてください。

今年のお正月、3年ぶりに実家に帰りました。父は耳がすつかり遠くなって、母が大声で話していてもなかなか通じないのです。補聴器を使うように勧めてみたのですが、父は「聞きづらい」といって嫌がっています。いつも大声で話しかけており、母も疲れているようです。父と会話するために、何かいい方法はありませんか?

補聴器に頼る前にできること

家族やヘルパーさんが耳元で大声で話しても聞こえないお年寄りと、私が普通の声でしゃべって、ちゃんと会話できることがあります。「魔法でも使っているんですか?」なんて尋ねられることもあります。

特別なやり方があるわけではないので、自分でも驚いていたので、その理由を考えてみました。 まず、声の高さです。年をとると高い音が聞こえにくくなります。ところが、介護者は大半が女性で、しかも耳が遠いお年寄りだからというので、大きな声を出します。すると声がますます高くなってしまうのです。

しかし、女性でも「魔法」を使える人がいます。そういう人の話し方を観察しているうちに、大切なことが分かってきました。まず相手の視界に入って、ニコッと笑いかける。「私にはあなたと話したいことがありますよ」という意思をお年寄りに伝えるのです。耳が遠いなら目を通してコミュニケートしよう、というわけです。

そして小さな声で、でも口は大きく動かして「あ・の・ね」と言います。お年寄りは口元を見て相手のことを理解し、小さくうなずきます。耳も気持ちも、話している相手に向かっています。 こうした準備さえできていれば、あとは簡単です。普通の大きさの声で、ゆっくり・はっきり話せばいいのです。聞こうという気持ちになっていないお年寄りに、遠くから大声で呼びかけても、うまくいかないのは当然です。

こちらを向いてくれるわけがありません。 周りから、全然耳が聞こえないと思われていた老人との会話が、この方法で成功したこともあります。補聴器は雑音を拾ってしまうため、お年寄り向きとは言えません。機械に頼る前に、ちゃんと根拠のある「魔法」を試してみてください。