母が「早く死にたい」と繰り返します。
長男一家と同居している、母のことです。二女の私が週1回顔を出しますが、そのたびに「早く死にたい」「死んだほうがいい」とくり返します。腰を痛めて歩くのは少し難しいのですが、目も耳も頭もしっかりしています。どうしてこんなに気弱になったのかと情けなくなります。どう対応すればいいでしょうか?
長生きしてよかった、と思える体験を。
お母さんのように、人に頼らないで一人で頑張って生きてきた人のほうが、「老い」を受け入れるのが難しいことが多いのです。 日本では「他人に迷惑をかけてはいけない」と教えられてきました。
お母さんの世代ならそれに加え、「国や社会に世話をしてもらうなんてとんでもない」という考え方も植えつけられているのです。 でも、誰でも長生きして年をとれば、必ず誰かに助けてもらわなければ生活できません。
しかも、核家族化が進んだ今、老いを支える役割は国や社会が負うのが当然ですが、お年寄りたちの意識が変わるはずはありません。ですから、お母さんが「この先、人様や世間に面倒をかけるくらいなら、死んだほうがいい」と思ったとしても不思議ではありません。 ひょっとすると「みんなは『役に立たない老人は早く死んだほうがいい』と思っているんじゃないか」なんて考えているのかもしれません。
そこで「死んだほうがいい」と言って、周りにいる私たちの反応をうかがっているのではないでしょうか。 お母さんが「もう死にたい」と言うたび、周りが「長生きしてね」と言葉にして伝える必要はありません。「こんな身体になっても生きていてよかった」と実感できる生活をつくってください。 行楽地に行ったり、同年配の方で楽しく生活している人とふれあうのもいいでしょう。
最適なのは誕生日をみんなでお祝いしてあげることです。照れて「こんな年になって誕生日なんて」と言いながらも、本心ではうれしくないはずがありません。 長生きすることを周りが喜んでいるということを、具体的に示してあげてください。そのうち「死にたい」なんて言葉は聞かれなくなると思います。