訓練と生活のどちらが大事ですか?

どうやって生活するかが訓練をするよりも大切だという「リハビリはとても大事だ」という話も聞いたことがあります。実際、私の叔母は脳梗塞で入院し、リハビリでかなり回復しました。どちらの考えが正しいのでしょうか?

急性期にも生活を取り入れよう?

脳卒中で倒れて入院しているすべての人に、症状が出て約半年といわれる回復期に、ちゃんとしたリハビリを受けられるようにするのは、とても大切なことです。何より治療と回復期のリハビリが必要になります。

でも、たとえそういう態勢が整ったとしても、問題は解決しません。立派な病院でリハビリを受けても、退院して家に帰ってから「寝たきり」の状態になっている人が大勢いるからです。 そこで、マヒした手足をかかえながら、できるかぎり当り前の生活をつくる方法を、私たちは提案してきました。

老いや障害があっても、いやあるからこそ、寝たままではなく座って食事をし、機械を使わないお風呂に入って、トイレで座って排泄してもらおうということです。それを「生活リハビリ」と呼んできました。

すでに病院での治療期間を終えて、家や施設で生活している人たちにとって、それまで当たり前に行ってきた生活行為を維持していくことこそが大事なのです。つまり、「病院ではリハビリ第一、生活の場では生活第一」と考えてください。 もっとも、とつくに生活が第一の課題になっているのに入院している人や、病院でのリハビリにこだわっている人もいます。病院は本来「治療の場」であって「生活の場」ではないということを忘れないでください。

しかし、在宅復帰に向けたリハビリに力を入れる病院も、最近では増えてきました。急性期から食事・排泄・入浴を当り前に行うことこそ治療の効果を高めるという主張をしているお医者さんもいます。 手足のマヒを回復させるための訓練は大切です。でも、不自由な手足を持って生きていこうとする意思をなくしてしまわないことこそ、治療の大前提なのです。